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 梶野稔オフィシャルブログ 


by minorucasino

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代役から考える演技論

入団以来、代役をやらせて頂く事が多い。

入団1年目の時は主役の代役をやる事になり、1日でセリフを入れた事もあった。(今では考えられない…。)
「浅草物語」では3役ほどやり、本役よりも良いという事になり(他にも理由はあったと思うが)本役の先輩3人の前でやるという大変気まずい思いもした。
しかし大滝さんとセリフをやりあえたのは良い思い出、良い経験だ。

今、次回作「大正の肖像画」の稽古中だが昨日久々に代役を務めた。
孝雄さんの役。30代の若手としては大変やり辛い。他に適任の先輩もいる中で私になったのだから、その期待に応えるべく務めないといけない。

務めるといってもこれはオーディションだ。演出家、他の劇団員の注目を集める。
しかし自分も試したい事がある。
抜けたパズルを埋めるように演じるやり方もあるだろうが、それではつまらない。
以前からもそうしていたが、自分の今の演技論、演劇感をやるべきだと考えた。
それが間違いかどうかも検証したい。

僕が最近落語やライブをやって実感している事はテクニック、上手さでは観客は感動しなくて、上手い下手ではないドラマチックなものを観て初めて感動してもらえるのではないだろうかと感じてきた。
ライブの時もやはり宇野先生が残した言葉、「思えば出る」でしかないんだと決意してやってきた。

しかし難しいのはある程度の技術を持ち合わせていないとそれは通用しない。
落語なら口跡など、歌なら音程など。
演劇はその全てと身体表現。

台本をもらってから、全部の役を落語のように声に出して読んでいたから、急な翌日の代役でも焦りはなかったのだが、いざ自分がやるとなると技術に走りたくなる。
下手と思われたくないし、評価も欲しい。
しかし、その道には行かないぞ、そこは行き止まりだと何度も思い直し当日を迎えた。

僕が今回心掛けたのは自分が考えた役の設定(金持ちで実は外では女遊び三昧という設定。)からセリフを相手に言って相手からもらった感情で会話するというもの。練習通りにはならないから柔軟性が必要となる。
しかし会話の軸となるのはこのセリフで何を相手に言いたいのかというもの。それはしっかり捉え、相手に話す。

こう書くと当たり前のようで基本的な事なのだが、これが難しい。
感情をもらったつもりだったり、もらったふりをしてしまったり。
相手役お構いなしで家で練習した通りのセリフを言ってしまったりもする。

稽古後、録音したものを聞くと間が持たず練習通りのセリフを言っていたり、言葉が不明瞭な所もあった。しかし相手役と会話出来て想定の範囲外の表現になった箇所があり、道は間違ってはいないと確信した。

本当に演技というのは難しい。
落語は演者と観客で成立するが、演劇は戯曲、演者と演者以外の役者、舞台装置、照明、音響効果、スタッフ、劇場空間、観客でやっと成立する。
その難しさを乗り越えた時の達成感を味わってしまったから劇団にいる訳だが、やればやるほど難しい。
そして芸術と言いたいが尊く崇高なものに感じてならない。

「劇団で芝居をやっている」というと大概理解されず低く見られ冷たい目で見られるが、観てから目線を決めてもらいたいものだ。

そんな思いも一方通行だろう。
それを覆す為にも頑張らなくてはいけない。
劇団は個の集合体。
その個のパフォーマンス能力を上げる努力を今まで以上に貪欲に演劇以外でも求めていく必要がある。

そうしなければ自分の田舎で、全国で演劇を観たいと応援して下さっている方々に申し訳ない。
by minorucasino | 2015-09-04 21:18 | Diary

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